2007年04月08日(朝日新聞)
自治体病院に勤める医師の給与は都道府県によって2倍の開きがあることが、日本政策投資銀行の調べでわかった。北海道や東北を中心に医師不足が深刻な地域ほど給与は高い傾向があり、自治体が「高給」で医師をつなぎとめている実態が浮きぼりになった。
表自治体病院の平均医師給与と人員
総務省がまとめた04年度の地方公営企業年鑑をもとに、同銀行が全国1000の自治体病院の経営を分析した。
常勤医の給与(時間外、期末手当などを含む)の全国平均は、年額換算で1598万円(平均年齢42歳)。都道府県別では北海道の2301万円が最高で、最低は奈良県の1132万円だった。岩手、宮城など東北各県は軒並み高水準なのに対し、西日本は全般的に低く、神奈川や東京、大阪など大都市部も低かった。
格差の背景には医師の偏在問題がある。給与の上位10道県はベッド100床あたりの医師数が平均9.4人。一方、下位10都府県は12.3人で、給与が高い地域は医師が少ない傾向があった。
全国でもっとも給与が高かった病院は、北海道北部の幌延町立病院(6科36床)の4586万円。町内唯一の病院で、ただ1人の常勤医である院長が日中の勤務に加え、平日は毎晩当直についているという。同病院は「町の財政は厳しいが、地域の医療を守るためにはこの待遇もやむをえない」と説明する。
道地域医療振興財団によると、道内の過疎地ではいまや、求人時に最高3000万円台の年収を提示する病院も珍しくないという。
だが、過疎地の医師不足に歯止めはかからず、給与による医師確保は必ずしも功を奏しているとはいえない。たとえば三重県尾鷲市の市立尾鷲総合病院は、05年に年収5520万円で産婦人科医を雇った。しかし医師は院内に寝泊まりしながら年に数日しか休日がとれず、1年後に退職した。
「高給作戦」は財政面からも限界がある。
政策投資銀の調べでは、自治体の支援なしで黒字を確保した病院は全体の7%(04年度)。自治体の支援総額は約7000億円(1病院あたり7億円)、病院を運営する公営企業の借金残高の総額は、約4兆円に達する。赤字体質の要因は人件費比率の高さで、自治体からは「もうこれ以上、人件費は増やせない」という悲鳴も上がっている。