「働き続けられるプログラムは?」「疲れをやりがい感に変えていける教育って?」。各病院の看護部長や師長らが対策を話し合う。「学生が悪いのではないが、技術を持たないまま出てきている」。鳥取赤十字病院の看護部長、村上一枝は現状を憂える。
約三千時間。村上らベテランが看護学生だったころの実習時間数だ。新カリキュラムは三分の一ほどの千三十五時間。「看護学という学問が確立され、大卒の子も増えて考える力はある。でも吸引すらできない子がいる」
昨年八月、専用のトレーニングルームを開いた。医療現場で使う器具や装置を備え、点滴や注射、機器の取り扱いを練習できる。開設後、使用記録を見ると若手看護師がよく利用していた。
新卒看護師の半数を、病棟配属してわずか半年で配置換えした。不適応を早期に発見することの大切さを学んだ。
これらの対策を重ねてたどり着いたのが四月からの新しい新人看護師研修だ。新人を三カ月間病棟に配属せず、病院全体の動きやシステムが分かるように看護部以外の部署も研修する。その後、適性にあわせて配属する病棟を自分が選択する仕組みだ。
「今の子は怒ったらすぐにつぶれる」「中堅以上の層に勉強し続けないといけないのだと、うまく伝えたいのだけど」。集まった看護師から、後輩や同僚を育て続けることの難しさが次々と挙がる。三朝温泉病院の副看護部長、大月京子は一通り意見が出るのを待った。「じゃあ病院としてどういう看護師を育てていきたいのか、整理しましょう」
病院が抱える看護業務や職場環境の課題は共通している。鳥取県は本年度、病院看護職員の交流事業を始めた。看護部長や師長クラスが集まり、課題に沿って意見交換し、解決策を探る試みだ。
出てきた課題は十四項目、参加希望者は約百二十人にのぼった。月一回程度自主的に集まり対策を検討している。
大月のグループのテーマは「看護教育の充実」。個人が成長する教育システムが導入できないか。やる気を引き出す評価制度の仕組みはないか。病院の垣根を越えた議論は白熱する。
今夏開かれるシンポジウムで看護職員や病院管理者らを前に、全グループが練りあげた対策案を発表する。しかし、大月らにとってあくまでも通過点だ。「最終的な目標は、多くの病院に提案した教育案などが導入されること。働き続けたいという意欲を引き出す仕掛けに少しでもなってくれること」
「離職防止策は労働条件や待遇を良くすることだけではない。働く質を自分たちで上げていくことも、働き続ける動機につながる」。それぞれが選んだ職場で、生き生きと働く看護師の理想像を思い描く。(日本海新聞)